なぜ貴社の「シートバリデーション」はDI査察で見抜かれるのか
問題提起(共感と痛み)
QCや製造部門において、Excelは最も身近なツールです。
試験計算
統計処理
バッチデータ整理
その多くがExcelシートで管理されています。
そして多くの現場では、
- 計算式セルをロックしている
- 入力セルを制限している
- テンプレートを固定している
といった対策を行い、
「Excelはバリデーション済みだから問題ない」
と認識しているケースが少なくありません。
しかしGMP査察やFDA査察では、このExcel管理が
データインテグリティ(DI)上の重大リスクとして指摘される例が増えています。
なぜでしょうか。
メカニズムの深掘り(なぜ起きるのか)
Excelの最大の問題は、
変更履歴の完全な追跡ができないことです。
DIの基本原則である
ALCOA+(Attributable, Legible, Contemporaneous, Original, Accurate)
では、
・誰が
・いつ
・どのデータを
・どのように変更したか
を完全に追跡できる必要があります。
しかしExcelでは、
- 数式変更
- セル上書き
- データ削除
といった操作が容易に行えます。
さらに問題なのは、これらの操作が
Audit Trailとして完全に残らないことです。
つまり理論的には、
後から数値を修正することが可能な環境
が存在してしまいます。
そのため査察では必ず次の質問が行われます。
「このExcelシートはバリデーションされていますか?」
しかしここで多くの企業が誤解しているのが、
シートバリデーションの意味です。
多くの企業は
・作成時の計算確認
・入力テスト
だけで完了としています。
しかし当局が求めているのは
継続的な妥当性確認です。
具体的には
- ダミーデータ入力
- 手計算との一致確認
- 定期的再検証
つまり
年1回以上のキャリブレーション
が必要になります。
もし数千枚のExcelシートを使用している場合、
この検証作業は膨大な工数になります。
そして結果として、
形式的な点検
になりがちです。
査察官はこの状況を非常によく理解しています。
解決の視点(設計思想)
Excel管理の問題は、
Excelの使い方ではなく
管理アーキテクチャ
にあります。
つまり、
「Excelをどう管理するか」
ではなく
「Excelに依存しないシステムを設計するか」
という視点が必要です。
近年多くの企業が導入しているのが、
- LIMS(試験情報管理システム)
- 電子ラボノート(ELN)
- MES
- CSV対応計算ソフト
といった
CSV(Computerized System Validation)対応システムです。
これらのシステムでは、
- Audit Trail
- 権限管理
- データ履歴
- 電子署名
が自動的に記録されます。
つまり
データ改ざんが物理的に不可能な環境
を構築することができます。
技術コンサルタントの見解
Excelは優れたツールですが、
GMPシステムではありません。
Excelを中心にした品質管理は、
「潜在的なDIリスク」
を毎年再生産している状態と言えます。
確かにシステム導入には初期投資が必要です。
しかし、
・Excel検証
・手作業レビュー
・監査対応
にかかる長期コストを考えると、
電子化によるCSVシステム導入こそが
最も合理的な選択
となるケースが多いのです。
もし現在、
- Excel依存のQC業務
- シートバリデーションの負担
- DI査察対応
に課題を感じている場合、
それは現場の努力の問題ではなく
品質システム設計の問題
かもしれません。
そして設計を見直すことこそが、
データインテグリティ時代における
最も確実なリスク低減策となります。
本記事で触れた技術解説については、TH企画主催の技術セミナーで、具体的事例を交えて体系的に解説しています。
【本記事について】
本記事は、TH企画セミナーセンターが主催する実装技術分野のセミナーにおける
講義内容・質疑応答・実務事例をもとに、製造業向け技術情報として編集・再構成したものです。
執筆・編集:TH企画 技術コンテンツ制作チーム



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