――論理的リスクファクター抽出の技術
■ 問題提起
「大手だから大丈夫だろう」
「業界で有名だし安心だ」
その“認知度”は、どの式でリスク低減を証明できますか?
エンジニアリングにおいて、
定量化できない安心は、管理できないリスクと同義です。
監査設計の現場では、無意識のうちに“ブランド信頼”が
監査強度や頻度に影響を与えているケースが少なくありません。
しかし、品質保証は感覚では成立しません。
成立するのは、構造と数値だけです。
■ メカニズムの深掘り
品質リスクとは、
起こるか起こらないかの事象が、
企業の目的・戦略・患者安全に顕著な影響を与える可能性
です。
これを分解すると、
リスク = 発生確率(Occurrence)× 重大性(Severity)× 検出困難性(Detectability)
となります。
ここに「認知度」は入りません。
例えば、
- ICH国のメーカーであっても
- 中間業者を複数介している
- 輸送温度逸脱履歴がある
- 生理活性物質を同一施設で扱っている
- 変更通知の遅延が過去に発生している
この場合、発生確率は構造的に上昇します。
ブランドは確率を下げません。
物理的供給構造が確率を決めるのです。
さらに、単一ソース供給であれば、
供給停止リスクという事業継続リスクも同時に増大します。
認知度は“心理的安心”を与えるだけで、
リスク因子のいずれにも直接作用しません。
■ 解決の視点:設計思想
主観を排除するためには、
多因子スコアリングモデルの導入が不可欠です。
推奨される8つのリスクファクター:
- 製品の性状(無菌・一次包材・直接接触性)
- 製造工程の種類(無菌管理、微生物管理、特殊工程)
- 動物・ヒト由来原料の有無
- 同一施設での交差汚染リスク
- 供給経路の複雑性(輸送距離・中継点)
- 中間業者の介在有無
- 当局査察履歴・指摘レベル
- CAPA完了状況および再発履歴
これらを掛け算で評価します。
なぜ掛け算なのか。
一つでも重大因子があれば、
総合リスクは指数的に上昇するからです。
例えば、
交差汚染リスク × 無菌製品 × 複雑な供給経路
この3つが重なった瞬間、
リスクプロファイルは全く別次元になります。
これが“構造リスク”です。
■ 見逃してはならない事実
「有名だから安心」
「過去に問題がなかった」
これはリスク低減の証明ではありません。
過去に問題がなかったことと、
将来も問題が起きないことは無関係です。
リスクは、
構造を変えない限り潜在し続けます。
サプライチェーンの物理的構造を分解し、
スコアリングし、可視化すること。
これがプロフェッショナルの監査設計思想です。
■ 次の一手
御社のサプライヤーは、
- リスクスコアが定量化されていますか?
- 監査頻度はスコアと連動していますか?
- 主観的評価が混在していませんか?
もし曖昧な部分があるなら、
監査設計の再構築が必要です。
本記事で触れた技術解説については、TH企画主催の技術セミナーで、具体的事例を交えて体系的に解説しています。
【本記事について】
本記事は、TH企画セミナーセンターが主催する実装技術分野のセミナーにおける
講義内容・質疑応答・実務事例をもとに、製造業向け技術情報として編集・再構成したものです。
執筆・編集:TH企画 技術コンテンツ制作チーム




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