片持ち梁の自重解析。
弾性力学の理論解が明確に存在する、いわば解析の基礎中の基礎です。
ところが講義では、
同一の問題設定であっても、
使用するソフトやモデル化条件によって、
理論解と無視できない差が生じた事例が紹介されています。
フリー系の解析ツール、
商用の代表的な構造解析ソフト。
いずれにおいても、条件次第では
理論値から大きく外れた結果が得られるケースがある。
この事実に違和感を覚えないと、設計判断は非常に危険なものになります。
重要なポイントは一つです
理論解が存在する問題において、
理論解とCAE結果は本来一致します。
もし一致しないのであれば、
それは「ソフトの性能差」ではありません。
原因は必ず、
- 要素種別の選択
- 要素分割の与え方
- 境界条件の定義
このいずれか、あるいは複数に存在します。
「有限要素法は近似解だから、多少ズレるのは仕方ない」
この理解は、講義の中で明確に否定されています。
理論解が分かっている問題で、
結果が大きく乖離する場合、
それは近似誤差ではなく、モデル化の誤りです。
CAEはブラックボックスではない
CAEは、
- 接点座標
- 要素
- 境界条件
- 材料定数
これらの入力情報から、数値計算を行っているに過ぎません。
中で「魔法」が起きているわけではありません。
にもかかわらず、
解析結果が想定と合わなかったとき、
「なぜそうなったのか」を説明できないまま
次の設計判断に進んでしまう例が後を絶ちません。
これは、解析技術の問題ではなく、
評価姿勢の問題です。
説明できない解析は、設計判断に使ってはいけない
講義で繰り返し強調されている評価の大前提があります。
「ズレた理由を説明できない解析結果は、
設計判断の根拠として使ってはいけない」
理論解がある問題であれば、
まずは
- なぜ一致しないのか
- どの仮定が結果に影響しているのか
これを一つずつ検証する必要があります。
そのプロセスを飛ばし、
「ソフトが出した数値だから」
「それっぽい値だから」
と判断することは、
設計リスクを先送りしているだけです。
結論:問われているのは“操作”ではない
この話題は、
「どのCAEソフトを使うべきか」という議論ではありません。
問われているのは、
- 理論解と結果を突き合わせる姿勢
- モデル化を疑う視点
- 数値の意味を言語化する力
です。
これができなければ、
どれほど高機能な解析ツールを使っても、
CAEは設計を守る武器にはなりません。
「その解析は、なぜ正しいと言えるのか」
この問いに答えられるかどうか。
そこに、解析を“使っている人”と“使いこなしている人”の
決定的な差があります。
本記事で触れた技術解説については、TH企画主催の技術セミナーで、具体的事例を交えて体系的に解説しています。

【本記事について】
本記事は、TH企画セミナーセンターが主催する実装技術分野のセミナーにおける
講義内容・質疑応答・実務事例をもとに、製造業向け技術情報として編集・再構成したものです。
執筆・編集:TH企画 技術コンテンツ制作チーム



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