設計基準を満たしていれば安全なのか
設計業務において「強度計算はクリアしている」という言葉は、
しばしば安全性の根拠として使われます。
しかし、実際の破損事故を振り返ると、設計基準を満たしていたにもかかわらず破損に至った事例は少なくありません。
この矛盾は、設計基準そのものが誤っているというより、設計基準が前提としている条件と、実機が置かれる現実の使用環境との間にギャップがあることに起因します。
静的強度設計が暗黙に置いている前提条件
荷重は想定どおりに作用するという前提
多くの設計計算は、代表荷重や定常状態を前提に行われます。しかし実機では、
- 過積載
- 振動や衝撃
- 起動停止の繰り返し
といった非定常荷重が支配的になるケースが多く、これが疲労やき裂発生の起点になります。
材料は均質で欠陥がないという前提
設計基準上は、材料特性は規格値で代表されます。しかし実際には、
- 微小欠陥
- 製造ばらつき
- 溶接部の不均質性
が存在し、「最弱リンク」が破損を支配することがあります。
破損事故が示す共通パターン
歴史的な破損事故を俯瞰すると、以下の共通点が見えてきます。
- 静的強度は十分だった
- 繰返し荷重や残留応力が考慮されていなかった
- 破壊は局所から始まった
つまり、破損は“平均的な強度”ではなく“局所的な弱点”から始まるのです。
設計者・品質保証が最初に疑うべき視点
強度計算結果を見る前に、次の問いを立てる必要があります。
- この構造はどこから壊れうるか
- き裂が発生したら、どこまで進展するか
- 設計基準はどこまでを保証しているのか
設計基準は「安全の最低条件」であり、「破損しないことの保証」ではありません。
「強度計算」のポイント―――
本記事の内容は、TH企画が主催する技術セミナーで詳しく解説しています。
【本記事について】
本記事は、TH企画セミナーセンターが主催する実装技術分野のセミナーにおいて実施された講師による講義内容、質疑応答、ならびに紹介された実務事例をもとに、TH企画が製造業向け技術情報として編集・再構成したものです。
セミナーで実際に議論された内容を踏まえ、
最新の実装トレンドや、現場で判断に迷いやすい故障対策・品質評価の考え方について、
技術的背景と判断のポイントが伝わる形で整理・解説しています。
本記事は、現場技術者、品質管理担当者、設計者が
日常業務における技術判断の参考情報として活用できることを目的としています。
執筆・編集:TH企画 技術コンテンツ制作チーム




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