■ 問題提起:共感と痛み
「3年に1回、ルーチンとして監査を行っている。指摘事項も特になし。なのに、なぜか突発的な品質不良が止まらない……」
そんな現場の疲弊した声をよく耳にします。
チェックリストは全項目クリア。
重大指摘ゼロ。
文書も整備済み。
それでも、市場回収は起きます。
実際、重大回収案件の中には
「過去数年間、監査指摘ゼロ」だった企業が少なくありません。
なぜでしょうか。
形骸化した定期監査は、もはや安心材料ではありません。
それは単なる“記録作業”に成り下がっている可能性があります。
■ メカニズムの深掘り:なぜ起きるのか
多くの監査が失敗する理由は、
水平的(システム)監査に偏りすぎていることにあります。
品質マネジメントシステム、製造管理、試験室管理、原材料管理――
全体像を俯瞰すること自体は重要です。
しかし、問題は“深さ”です。
例えば、
- 微生物モニタリング値が緩やかに上昇している
- 同一作業者に軽微逸脱が集中している
- 記録修正頻度が増加している
- 変更管理の承認遅延が慢性化している
これらは“兆候”です。
水平的な監査では、この予兆は絶対に見えません。
なぜなら、それは「適合/不適合」の問題ではなく、
リスクの勾配の問題だからです。
■ 解決の視点:設計思想
必要なのは網羅ではありません。
必要なのは、抉(えぐ)る設計です。
リスク = 発生確率 × 重大性 × 検出困難性
この式で考えたとき、
本当に深掘るべきエリアは限られています。
監査設計はこうあるべきです:
- 20%:水平的確認
- 80%:リスク集中エリアへの垂直掘り
「どこを網羅するか」ではなく
「どこに工数を集中投下するか」
これが設計思想の転換です。
■ 専門家の断言
「全方位の安心」を求める監査は、本質的に無防備です。
重大事故は、
“平均的な管理”の中ではなく、
リスクの集中点から発生します。
監査は作業ではありません。
リスク構造を暴く設計行為です。
■ 次の一手
もし御社が、
- 監査頻度を慣例で決めている
- 垂直監査を意図的に設計していない
- リスクスコアリングを導入していない
ならば、一度設計を見直すべきです。
本記事で触れた技術解説については、TH企画主催の技術セミナーで、具体的事例を交えて体系的に解説しています。
【本記事について】
本記事は、TH企画セミナーセンターが主催する
実装技術分野のセミナーにおいて実施されたセミナー内容、ならびに紹介された事例をもとに、
TH企画が製造業向け技術情報として編集・再構成したものです。
執筆・編集:TH企画 技術コンテンツ制作チーム




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