■ 問題提起:共感と痛み 「大手商社(ベンダー)から買っているので安心です」 監査の現場で、この言葉が担当者の口から出た瞬間、経験豊富な監査員はその企業の管理レベルを「危うい」と判断します。なぜなら、品質の責任は「製品を売る者(ベンダー)」ではなく、常に「製品を作る者(サプライヤー)」に帰属するからです。商流上の契約関係を品質保証の根拠と混同している企業は、必ずサプライチェーンの「ブラックボックス」で足を掬われます。
■ メカニズムの深掘り:なぜ起きるのか 最大の問題は「誰が品質を作っているか」という視点の欠如です。ベンダーは流通を担う「販売者」であり、サプライヤーは品質を作り込む「製造者」です。 1次情報(ベンダー監査③)に基づけば、監査対象は「商流」ではなく「品質流」で定義されなければなりません。
例えば、承認サプライヤーの確認を行う際、本社(商社)の所在地だけを照合しても、品質保証上の意味は乏しい。実際に確認すべきは「製造所の所在地」であり、その拠点が自社で承認した環境であるかどうかです。 また、「ベンダーだから簡略監査でいい」という考えも危険です。特に保冷品などの温度管理が必要な原料では、商社の先の「外部倉庫」や「配送業者」こそがリスク源となります。
- 表示温度条件を満たしているか?
- 温湿度記録は校正済み機器で取得されているか?
- 万が一の逸脱時、どのタイミングで自社に連絡が入る契約になっているか? これらは形式的な確認ではなく、品質保持能力の「検証」です。契約相手であるベンダーの裏側に隠れた、実態としてのサプライヤー(製造所・物流拠点)を直視できていない組織は、査察において「管理監督義務の欠如」を指摘されることになります。
■ 解決の視点:設計思想 強い品質組織は、監査範囲を「契約範囲」ではなく、**「リスク影響範囲」**で再定義しています。
- 品質流の可視化: 仲介業者が何社入っていようと、製造地点から自社受入までの全経路を「品質リスク範囲」として特定する。
- 責任境界(インターフェース)の設計: 商社に対し、製造所の変更情報を「何日以内に」通知させるか、その責任境界を品質合意書(GQA)で研ぎ澄ます。
- 実態の物理確認: 荷札や納品書の発送元住所と、承認製造所が一致しているかを現場(受入検査時)でクロスチェックする。
■ 品質管理者の本来の職務 商流と品質流を混同する企業は、サプライチェーンの変動に耐えられません。監査とは、単なる「取引先確認」ではなく、「品質責任の所在確認」です。「誰から買ったか」を問うレベルを卒業し、「誰が作ったか、どこを通ったか」を執拗に追い続けること。それこそが、品質管理者が果たすべき真の役割です。
本記事で触れた技術解説については、TH企画主催の技術セミナーで、具体的事例を交えて体系的に解説しています。
【本記事について】
本記事は、TH企画セミナーセンターが主催する実装技術分野のセミナーにおける
講義内容・質疑応答・実務事例をもとに、製造業向け技術情報として編集・再構成したものです。
執筆・編集:TH企画 技術コンテンツ制作チーム




コメント