ウイスカという現象を、私たちは本当に理解しているか

エレクトロニクス

製造現場でウイスカが見つかると、「管理が悪かったのではないか」「たまたま運が悪かっただけではないか」という議論で終わることが少なくありません。しかしセミナーでは、その理解自体が、ウイスカ対策を難しくしている最大の要因だと整理されています。ウイスカは偶然の産物ではなく、条件が揃えば必然的に発生し得る現象です。

セミナーでは、ウイスカの初期記録が16世紀まで遡る点が紹介されています。つまり、ウイスカは近代の電子機器や実装技術が生み出した新しい不具合ではありません。材料と応力が存在する限り、時代や用途を問わず現れ得る現象として、長い歴史を持っています。

現場で多い誤解の一つは、「最近になってウイスカが増えた」という認識です。セミナーでは、その背景として、材料や工程の前提条件が変わったことが説明されています。かつてスズメッキには鉛が添加され、また亜鉛メッキではシアン系プロセスが用いられていました。これらは意図せずとも、ウイスカの成長を抑制する役割を果たしていました。規制によってそれらが使えなくなった結果、抑えられていた現象が表面化したにすぎません。

セミナーでは、ここで重要なのは「原因が新しく生まれたのではない」という点だと強調されています。鉛規制やシアン規制は、ウイスカを生んだのではなく、ウイスカを抑えていた条件を取り除いたに過ぎません。この違いを理解しないまま、「鉛フリーだから仕方がない」と結論づけてしまうと、技術的な思考はそこで止まります。

では、なぜウイスカは伸びるのでしょうか。セミナーでは、ウイスカを「故障モード」ではなく、「結果として現れた形態」と捉える視点が示されています。駆動力となるのは、メッキ層や界面に蓄積された圧縮応力です。この応力が他の方向へ逃げられなくなったとき、結晶構造の特性に従って、最も抵抗の小さい方向へと原子が押し出されます。その結果として観測されるのが、針状のウイスカです。

このためセミナーでは、「出たから不良」「出ていないから安全」という二元論が危険だと説明されています。重要なのは、どの条件の組み合わせで圧縮応力が生まれ、どこに集中し、どの経路で表面へ解放されるのかを説明できるかどうかです。ウイスカは単独原因で起きないため、原因を一つに決め打ちする対策は再発を防げません。

正しい設計・評価の考え方として、セミナーでは三つの視点が整理されています。第一に、材料や工程の前提が規制によって変わっていることを理解すること。第二に、応力の発生源と集中箇所を構造的に説明できること。第三に、その条件を試験で再現し、どこまでが安全域で、どこからが危険域かという限界を把握することです。

セミナーでは、ウイスカ対策とは「管理を厳しくすること」ではなく、「物理現象として理解し、条件を設計と評価で制御すること」だと整理されています。この視点に立ったとき、ウイスカは運任せのトラブルではなく、技術として向き合うべき現象になります。それが、信頼性設計の出発点であり、品質保証の本質です。

本記事で触れた技術解説については、TH企画主催の技術セミナーで、具体的事例を交えて体系的に解説しています。

【本記事について】
本記事は、TH企画セミナーセンターが主催する実装技術分野のセミナーにおける
講義内容・質疑応答・実務事例をもとに、製造業向け技術情報として編集・再構成したものです。

執筆・編集:TH企画 技術コンテンツ制作チーム

【本記事について】

本記事は、TH企画セミナーセンターが主催する実装技術分野の専門セミナーにおいて実施された
講師による講義内容、質疑応答、ならびに紹介された実務事例をもとに、
TH企画が製造業向け技術情報として編集・再構成したものです。

セミナーで実際に議論された内容を踏まえ、
最新の実装トレンドや、現場で判断に迷いやすい故障対策・品質評価の考え方について、
技術的背景と判断のポイントが伝わる形で整理・解説しています。

本記事は、現場技術者、品質管理担当者、設計者が
日常業務における技術判断の参考情報として活用できることを目的としています。

執筆・編集:TH企画 技術コンテンツ制作チーム

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