「偶発故障」という言葉で思考停止していないか? ――物理法則に“偶然”などない

技術解説

■問題提起:再現性のない不具合を「運」で片付けていないか

「市場で1件だけ故障が発生したが、再現試験では再現しない。これは『偶発故障』であり、対策のしようがない。」

不具合検討会で、このような結論を出してはいませんか?

しかし、半導体や電子部品の世界で多用される「偶発故障」という言葉は、しばしば真因究明からの逃避に使われています。物理現象において、何の原因もなく「偶然」壊れることはあり得ません。この言葉で思考を止めることは、次に起こる大規模な市場トラブルの予兆を見逃すことに他なりません。

■メカニズムの深掘り:隠れた「欠陥を含んだ良品」の存在

市場で早期に発生する「偶発」に見える故障の正体は、出荷時点では検査規格をパスしながら、内部に微細な不連続点(欠陥)を抱え込んだ個体です。

これらは統計上、指数分布(ワイブル係数 $m=1$)を示しますが、その根底には必ず物理的な**「反応劣化」**が存在します。

  • 局所的な熱ストレスによる絶縁膜の劣化
  • 製造工程で混入した微細な異物による電界集中
  • 不完全な接合部における原子拡散の加速

これらが特定の条件下で一気に進展し、ある日突然、機能喪失(破壊)に至るのです。つまり、偶発故障とは「見つけられなかった初期故障」の継続に過ぎません。

■解決の視点:劣化の前兆を「測れるようにする」技術

「動くか、動かないか」というデジタルな判定(Go/No-Go)を続けている限り、偶発故障は防げません。必要なのは、破壊に至る前の物理的変化を数値化する設計思想です。

  1. 6つの劣化指標の観測

「変化・変色・変位・変形・変質・変態」という物理的予兆を捉える測定系を構築する。

  1. 非破壊解析の導入

目視や導通チェックに頼らず、超音波探傷やX線、ロックイン赤外線熱解析などを用いて、内部の微細な違和感を定量化する。

  1. バーンインの科学的設計

単なる「エージング」ではなく、故障物理に基づいた最適なストレス(電圧・温度)を算出し、潜在的欠陥を効率的に顕在化させる。

■信頼性工学の見地

「測れないものは制御できない」――これは品質管理の原点です。

偶発故障と片付けている事象の裏には、必ず技術者が見落としている「劣化指標」が存在します。その前兆を物理量として捕捉し、論理的なスクリーニングへと昇華させること。それができて初めて、エンジニアは「偶然」という不確実性を支配下におくことができるのです。

本記事で触れた技術解説については、TH企画主催の技術セミナーで、具体的事例を交えて体系的に解説しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました