「垂直監査」と「製品監査」の融合 ――横串で刺したとき初めて見える“本当の品質”

技術解説

問題提起:共感と痛み 最新の設備、整備された手順書、完備された教育記録。それなのに監査指摘が止まらず、現場でのヒューマンエラーが減らない――。 この矛盾の原因は、あなたの監査の「視点」そのものにあります。多くの企業が行っているのは、組織の「箱」が規格に適合しているかを確認する「システム監査」です。しかし、本当にリスクが潜んでいるのは、その箱の中を流れる「製品の動き(プロセス)」の隙間です。部門単位の「垂直な視点」だけでは、製品が工程を跨ぐ際の「断絶」を見逃してしまいます。

メカニズムの深掘り:なぜ起きるのか システム監査では、各部門を個別に評価します。「倉庫管理:適合」「試験室管理:適合」「製造管理:適合」。ここまでは順調に見えます。しかし、製品は部門単位で存在しているわけではありません。工程を「横断」して流れていくのです。

1次情報(ベンダー監査②)にある倉庫の事例を見てみましょう。受入から保管までの一時仮置きエリアにおいて、区分表示が不十分であれば、未試験品と合格品が物理的に混在するリスクが生まれます。倉庫部門としての「整理整頓」ができていても、製品軸で見た「識別」が不十分であれば、誤使用(ミックスアップ)は必然的に起きます。 また、ロット管理の不備も「継ぎ目」で露呈します。同一原料であっても納入日が異なるロットを物理的に区別・管理できていなければ、いざ品質逸脱が起きた際の遡及調査(原因追跡)は不可能になります。 さらに、QCラボ(試験室)で手順書通りの運用がなされていると部門監査で判定されても、実際の製品の試験データを追跡すると、その裏に「正式記録ではないメモ書き」が存在するケース(ベンダー監査③)が見つかります。これらは「点」の監査では決して見えず、製品という「線」を追うことで初めて発覚する不備です。

解決の視点:設計思想 部門ごとの深掘り(垂直監査)に、**「製品監査(横串視点)」**を強力に融合させてください。 特定の1ロットをターゲットに選び、以下のプロセスを「一気通貫」で物理的に追跡(バックトレース)します。

  • 原料受入: 荷札の製造所所在地は承認通りか?
  • 保管: 保冷品の温度記録は、校正済み機器で継続的に取得されているか?
  • 製造: 投入されたロット番号は、倉庫の出庫記録と現物で一致するか?
  • 試験: 試験担当者とシステム管理者の権限は分離され、メモ書きなしで記録されているか?

信頼性を担保する構造 システム監査は「点」を見る監査であり、製品監査は「線」を見る監査です。点が合格でも、線が崩れていれば品質は守れません。真に強い品質組織とは、製品軸という横串で刺されたとき、どの工程のどの瞬間からも「論理的な証拠」が返ってくる組織のことです。

本記事で触れた技術解説については、TH企画主催の技術セミナーで、具体的事例を交えて体系的に解説しています。

【本記事について】
本記事は、TH企画セミナーセンターが主催する実装技術分野のセミナーにおける
講義内容・質疑応答・実務事例をもとに、製造業向け技術情報として編集・再構成したものです。

執筆・編集:TH企画 技術コンテンツ制作チーム

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