医薬品・化学品開発の進め方・注意点,スケールアップ実験の進め方・考え方・実験結果の評価方法,プロセス開発の進め方・様々な事例,原薬・中間体・加賀気品のスケールアップ製造の事例・失敗例について,豊富な経験に基づき分かりやすく解説する特別セミナー
- 講師
株式会社三和ケミファ 医薬品事業部 統括本部長 丸橋 和夫 先生 薬剤師・薬学博士
- 日時
- 会場
- ※本セミナーはWEB受講のみとなります。
- 受講料
- (消費税率10%込)1名:49,500円 同一セミナー同一企業同時複数人数申込みの場合 1名:44,000円
※別途テキストの送付先1件につき、配送料1,210円(内税)を頂戴します。
- テキスト
受講概要
受講形式 WEB受講のみ ※本セミナーは、Zoomシステムを利用したオンライン配信となります。 テキスト 製本資料(受講料に含む) ※別途テキストの送付先1件につき、配送料1,210円(内税)を頂戴します。 受講対象 医薬品(原薬、中間体)のプロセス開発の担当者(初心者、担当者、指導者) 化学品のプロセス開発の担当者(初心者、担当者、指導者) 医薬品、化学品の品質保証業務担当者(初心者、担当者、指導者) 予備知識 有機化学、GMP(例えばICHQ7)、医薬品原薬、中間体の開発、化学品開発、プロセスケミストリーな どに関する知識があればより理解しやすいと思います。 習得知識 1)医薬品、化学品開発の進め方、注意点 2)スケールアップ実験の進め方、考え方、実験結果の評価方法 3)医薬品、化学品のプロセス開発の進め方、注意点、様々な事例 4)原薬、中間体、加賀気品のスケールアップ製造の事例、失敗例 など
講師の言葉
医薬品、化学品開発の最終目標は商用生産にある。原薬、中間体、化学品のスケールアップ製造は開発過程では絶対に避けられない部分であり、開発初期では合成プロセス、出発原料の変更のような大幅な変更も可能であるが、開発が進むにつれ変更は困難となり、逆に設定したパラメータの不足、不都合部分が明らかになってくる。スケールアップ検討ではプロセスに応じた実験計画を組む必要がある。
実験計画法は「実験の計画」と実験により得られたデータの「解析方法」の二つから構成される。実験の計画とは「目的に応じてどのような実験を行えばよいか?」あるいは「どうすれば必要なデータを効率的に集めることができるか?」と言える。
本セミナーでは実際に経験した事例(失敗例)を参考に各開発段階で行う実験の注意点、実際のスケールアップ製造で遭遇した問題点をどのように対処、解決したかを説明し、更にそこから得られた知見をもとに効率的な実験計画の立て方、必要なデータの集め方を説明する。
プログラム
1.医薬品(原薬、中間体)、化学品の開発とスケールアップ(基本的な考え方)
2.スケールとスケールアップの相違点
・小スケールとスケールアップのパラメータの比較と考え方、設定法
3.合成法、合成ルートの設定、考え方、注意点(ICH M7、化審法、その他)
4.スケールアップ実験するためのチェックポイント、考え方と原料、中間体の評価項目(安全性、安定性、結晶多形、溶媒和他)とその対応策
5.実験計画法による効率的なデータ収集
(1)スケールアップを前提とした実験計画の考え方
(2)スケールアップ前提の実験計画の考え方、データの取得法、活用法(事例を参考に)
・事例1:プロセスの短縮(7日近くかかるプロセス(反応→抽出→濃縮→晶析→乾燥)を2日に短縮。)
・事例2:過酸化水素水による酸化反応(危険性回避)
・事例3:結晶多形のスクリーニング
6.スケールアップでの問題点(実際の経験から)と対応策
(1)開発初期(実験室~10Lスケール)の事例
●転位反応:1gから10gにスケールアップしたら転位反応が原因で目的物が得られなくなった。(反応機構の理解)
●アスコルビン酸硫酸エステル誘導体の製造:1gスケールでは目的物が合成できたが、10gスケールでは合成不可の結果となった。(中間体の安定性)
●カラム分離工程の回避:前臨床試験に進むことが決まり、カラム分離工程回避の必要性が出てきた。(結晶性誘導体)
●ピリジン・無水硫酸錯体(硫酸エステル化剤)の合成:吸湿性が原因で目的物が得られないと判断したが、逆に吸湿性を利用することで大量生産可能な方法を見出した。(目的物の物性の理解)
●ペントキシフィリン中間体の製法検討:文献を参考に実験を進めたが目的物は得られず、実験結果に基づいて検討を進めたところ、簡単な製法にたどり着いた。(反応の理解)
●抗生物質の側鎖の製造:新合成法を考案し、特許出願までしたが、中間体に安全性の問題あることがわかり、検討中止。(安定性は変えられない)
●五塩化リンによるクロル化プロセス:溶媒を変更したら反応が進まなくなった。(結晶多形の影響?)
●アルキルホルムイミデート類の合成:青酸ガスを使用しなければならない。(反応の理解)
●エステルの選択(アミノチアゾール誘導体):メチルエステル、エチルエステルの比較実験をして相違点(物性)を確認、合理的な合成法に至った。
●その他
(2)パイロット試作(200~500Lスケール)での事例
●ジクロルアセトニトリルの製造:設備の性能を安易に考えて刺激性のミストが噴出した。(反応の理解)
●アミノチアジアゾール誘導体の製造:設備の性能を安易に考えてオーバー反応してしまった。(反応後の安定性確認)
●塩酸ペンタゾシンの中間体の製造:スケールアップして中間体を大量合成したら分解してしまった。(中間体の物性は変えられない)
●アミノチアゾール酢酸誘導体の製造:再結晶プロセスをスケールアップしたら目的物が得られなくなった。(必ず原因がある)
●臭素化プロセスのスケールアップ:パイロットにスケールアップしたところ、反応開始を確認できず、大きなトラブルに陥りそうになった。対処法を検討した結果、合理的かつ安全なプロセス開発に至った。
●撹拌速度の影響:アセトン/炭酸カリウム系でのアルキル化反応。(不均一反応の考え方)
●結晶多形の同等性:外部委託したら結晶形で同等性の問題が発生。(規格設定の重要性)
●その他
(3)パイロットから商用生産(2000Lスケール以上)での事例
●微量の添加剤の影響:2工程先の抽出・分液工程で問題(エマルジョン)発生。(微量の添加剤の影響、原料のロット管理)
●PhaseIII試験後の製法変更:爆発性の中間体を経由するためスケールアップ製造できずPhaseIII試験が終わってしまった。(反応の仕組みの理解)
●目標規格の原料が手に入らない:商用生産に入ろうとしたら原料が入手できなくなった。(原料調査の重要性)
●設備変更して反応の本来の姿がわかった:パイロットまでGL、商用生産でSUSに切り替えたところ錆が発生。(原料中の強熱残分の影響)
●アミノチアゾール酢酸製造のスケールアップ:パイロットまでは問題なかったが、商用生産で乾燥機の選択を誤った。(安定型と準安定型)
●キャンペーン生産:スポット生産では問題なかったエステル交換反応を、キャンペーン生産に切り替えたところエステル交換反応が進まなくなった。(種晶の影響)
●溶媒回収できる条件でプロセスを設計:溶媒回収しないと採算が合わなくなった。(発想の転換)
●残留溶媒の規格:商用生産に移行しようとしたら残留溶媒の問題発生。(溶媒和物)
●出発原料の製法に伴う問題(製法に伴う異性体混入の可能性)
(4)商用生産開始後の事例
●収量低下の逸脱:原料の溶解時間の影響(原料と溶媒の相互作用)
●技術移転:季節の影響まで考えていなかった。(湿度の影響)
●原料の純度をアップ:高純度の原料に切り替えた途端に逸脱(不純物除去の仕組み)
●乾燥時間の管理:順調に商用生産がスタートしたが、突然製品の乾燥時間が2倍(10時間→20時間)になった。(水和物の考え方)
質疑・応答 講師紹介 略歴 1979年 和光純薬工業株式会社入社、東京研究所主席研究員 1983年 薬学博士 (岐阜薬科大学) 1991年 大鵬薬品工業株式会社入社、工業化技術研究所・所長、合成技術研究所・所長 2007年 三菱商事株式会社入社、先端化学品本部技術顧問 (兼)常熟力菱精細化工有限公司(中国・常熟市)研開部本部長 2008年 (株)エースジャパン入社、常務取締役 山形工場長 2015年 (株)三和ケミファ入社 2016年 個人事業主登録 製薬会社研究所、商社、CRO、ベンチャーのアドバイザー業務を兼務し現在に至る。 著作 スケールアップ・ダウン検討/失敗例/解決(対処)法45の事例 (サイエンス&テクノロジー 2018年 8月)、他、分担執筆多数。 学会等 東京大学大学院薬学系研究科 薬学部研究員、米国化学会会員