効率的加速試験の進め方,解析手法,加速係数の求め方,寿命予測の方法,
限界試験の考え方,目的に合わせた試験の仕方,余寿命の推定方法,故障モード別故障モデル式,
設計への展開について事例・データ・図・写真を交えて実践的に解説する特別セミナー!!
- 講師
技術コンサルタント 伊藤 千秋 先生
オムロン株式会社 品質保証部長,部品技術部長等歴任後現職
制御機構部品の品質保証を15年,自動車電装部品の品質保証23年経験,品質・信頼性一筋のプロフェッショナル
この間,日本科学技術連盟 信頼性開発技術研究会 委員長などを歴任
- 日時
- 会場
- 受講料
- (消費税等込み)1名:49,500円 同一セミナー同一企業同時複数人数申込みの場合 1名:44,000円
- テキスト
受講概要
予備知識 ワイブル解析、累積ハザード解析の概念、基本知識は知っているのが望ましく、理解がより深まる。 習得知識 1)故障モード別の故障モデル式 2)加速係数のもとめかた 3)寿命予測のしかた 4)試験の目的にあわせた正しい試験のやり方 5)設計への展開のしかた(規格、設計法、試験法) 講師の言葉 本講座は、効率的な加速試験の進め方と、そのポイント、解析手法ついてなどについて自動車 電装部品からの事例に基づいて実践的にわかり易く解説する。 自動車部品は世の中で最も過酷な使われ方をする部品のうちのひとつである。材料的に見ると 車室内では-40~85℃、エンジンルームにいたってはー40~120℃でこれはプラスチック、 ゴムなどの材料や接合技術から見たらちょうど物性が切り替わる境界付近で限度いっぱいで 使うということであり、電気的には車両の電源電圧は5~13Vまでの変動に対応しうるもので なければならず、結露、雨水、日光、砂塵、振動といった環境条件の厳しさもある。 自動車部品ではこれを10-15年ほどの期間、その信頼性を確保することが絶対条件になってくる。 そういう中ではどういう条件だったら故障するのか、その故障モードは車両としてはどうなるのかと いった限界条件の把握をもとに故障時はどれくらいの市場相当時間になるのか、実用条件から見たら どれくらいの余裕があるのかを判断していくことになる。 そのための加速係数の求め方を故障モードをできるだけ固定して多角面からの加速係数の求め方を データ、写真、図を多用してより実践的な解説をする。 また、市場でクレームが発生したときの寿命予測のやり方をはじめ、現在、用いている試験は 一体何を想定して何年の条件に相当するのかといった試験規格、限界試験の考え方やその試験 結果からの評価のあり方までを紹介・解説する。 さらに、市場でトラブルが起きた時の市場相当年数(回数)の推定のしかたや、市場回収品から 余寿命がどれくらいあるかを推定するやり方などについても解説する。
プログラム
1.加速試験とは (1) 特性保証・動作保証・故障モード保証 (2) 市場再現性と加速性 (3) 限界試験 2.加速試験の成り立つ条件と制約条件 3.加速試験のもとになっている故障モデル 4.加速試験の種類と考え方 (1) ストレス加速とその制約条件 (2) 頻度加速とその制約条件 (3) 判定加速とその制約条件 5.加速試験のやり方 (1) 劣化の定義 (2) 劣化の測定尺度その測定 6.加速係数のもとめ方の実施例 (1)ポリエステル被覆銅線の耐湿寿命 温度湿度の試験条件で複数点での限界試験からワイブル解析で形状パラメータmを 導いたのち、加速が成り立つ温湿度条件の領域で蒸気圧則に乗っ取って加速係数を求める。 試験データの加速係数を求めたあと、市場での基準点としたい温湿度(蒸気圧) に対する点を挿入して外挿法で加速係数を修正する方法も示す。 プラスチック樹脂、ゴムならびに成型部品、シート部品の耐湿寿命の加速係数、寿命予測に 展開できる事例として紹介する。 (2)はんだ接続熱疲労寿命 はんだ接続のクラックは自己発熱を含む温度の変動ΔTで決まり、その繰り返しで熱疲 労劣化していく。そのうち、幾つかのやりかたを示す。 一つは熱衝撃試験のΔTを変えてクラックを判定条件にした試験条件を複数条件で実施して ワイブル解析した後に形状パラメータmを導き、加速が成り立つ領域の試験条件での データから温度変化ΔTに対する加速係数を求める。 もう一つははんだのクラックはSnの拡散と組織の粗大化の関係があり、はんだ組織の 大きさが同じ市場条件、長時間試験条件で同じ損傷度のものを置き、そのサンプルの 熱サイクル履歴の年数ないしは日数比で加速係数を求める。 さらにもう一つははんだ材の温度サイクル試験でその試験条件でかかるひずみとクラックを 生ずるサイクル数との材料データがあれば、それをもとに基板実装したはんだ部位の温度が かかることによるひずみを測定してはんだ材料データのひずみの時のサイクル数から寿命を推定する。 最後にもう一つ、はんだ接続の寿命式ではCoffin-Mansonの式が最もよく近似されると されよく使われているがCoffin-Mansonの式をつかって変形・修正させながら 作り上げた修正式で寿命を予測する。 (3)プリント基板熱疲労寿命 積層板の銘柄ごとに熱衝撃試験並びに湿度試験を実施した基板試験結果と積層板の 材料物性(線膨張係数、吸水率、ガラス転移点)を並べ、対比してみることにより、必要な 熱衝撃寿命並びに耐湿寿命を待たせるための材料物性とその値をつかむ。 これは積層板だけでなく、成形樹脂、金属材料、接点材料などの材料の材料物性と部品化 した後の部品の試験結果と対比して影響の大きい材料物性をつかむ時にも展開ができる。 (4)プリント基板耐結露寿命 結露サイクル試験はなかなか再現性に乏しい、制御が難しい試験法である。 これを確実に代用する滴水試験があるが、結露サイクル試験と滴水試験との間には加速が成り立ち、その加速係数を求めている。 (5)プラスチック樹脂耐熱寿命 プラスチック樹脂の耐熱寿命は過酷温度条件での80%強度、80%絶縁抵抗などの測定点のデータを複数打点して直線化したS-N図に基づき、市場で実際に使われる温度に対する寿命を推定する。 プラスチック樹脂の銅線への薄膜皮膜を形成したポリウレタン皮膜銅線も厚い、薄いはあるもののプラスチック樹脂の劣化として適用できる。 また、市場で使われるある一点の温度の寿命(点推定)並びにある温度変動範囲のある場合の寿命(区間推定)のやりかたも示す。 (6)ゴム劣化寿命 ゴムの劣化は酸化劣化、オゾン劣化が代表的なものであるが、そのうち酸化劣化(熱劣化)についてのゴム種類ごとの寿命予測(実験式)を示す。 (7)めっきの腐食寿命 めっきは市場で発生している故障モードを再現させる試験条件を模索することがまず大事なことである。市場ではありえないようなぼろぼろになる腐食を起こさせることは簡単なことであるが、それで市場故障と再現性があるかといえばそういうことではない。 そういう意味では中性塩水噴霧試験、酸性塩水噴霧試験、塩水噴霧・乾燥・湿潤サイクル試験のどれに適合するかの検証をした上で進めないといけない。 その上に立ってめっき皮膜寿命はめっき皮膜付着量と腐食速度を割った数値で示される。また、試験条件ごとの加速は腐食速度(腐食量/時間)の比でもって表される。 (8)めっきの硫化寿命 めっきの硫化についても同じことがいえる。 めっきの硫化試験では単一ガス試験でなく、混合ガス試験が硫化皮膜を大きく形成させ、市場との再現性もあるとされている。 そういう意味で濃度加速ではなく、二硫化ガス、硫化水素ガス、二酸化窒素ガス、塩素ガスの混合比でその硫化皮膜の形成には大きく左右される。 (9)リレー、スイッチの繰り返し動作寿命 リレー、スイッチの繰り返し動作寿命は機械的寿命と電気的寿命に分けられる。 そのうち電気的寿命については接点開閉部の寿命につきるといってよい。 接点の寿命は消耗・移転・溶着の故障モードでいずれもとらえる時期の差で起こる故障の モードが変わるだけである。 この寿命を決める因子はアーク(温度、持続時間)、開閉頻度であり、アークは負荷(種類、電圧、電流)である。 これらの試験では負荷ごとに頻度アップして寿命を求める頻度加速法で実施される。 (10)構造体の等価振動6.5乗則による振動加速試験 振動による破壊には加速度Gモードで壊れる場合と共振Hzモードで壊れる場合がある。 そのうち加速度モードで壊れるものの加速法には6.5乗則がある。 これは構造体の耐久振動寿命は耐久限界回数と耐久限界の加速度振動振幅/加速振動 試験の振動振幅の比の6.5乗で割りかけした回数になるというものである。 (11)半導体劣化寿命 故障モード別の代表的な故障モードとそのメカニズムごとの劣化の寿命式と活性化エネルギーを表で与え、その予測式を示す。 基本的にはアレニウス則である。 ただ、半導体の故障はこうした理論式で予測できないメーカ、ライン、構造、材料などの欠陥で故障するものが大半でその予防のための評価法の方が必要である。 (12)パワーデバイス繰り返し寿命 パワーデバイスの代表格であるパワーMOS-FETは大電流をON/OFFするメカ機構のリレーに相当する半導体である。 負荷のON/OFFが繰り返されることによるアルミ二ウムワイヤの根元部に応力集中してセルが破壊、リークを起こしながら熱破壊に向かって劣化が進んでいく。 ON条件でのPN接合部での温度とOFF条件との温度差ΔTをパラメータにパワーサイクル試験をするとパワーサイクルに対する寿命曲線が得られる。 (13)コンデンサ劣化寿命 コンデンサの種類別の高温寿命に対する寿命予測式を紹介する。 アルミ電解コンデンサでは温度、電圧、リップル率で内部発熱が始まり、電解液がガス化 して内圧が高まっていくと早くにドライアップすることになる。10℃2倍則はここから きた寿命予測式である。 (14)LED熱劣化寿命 LEDは外装樹脂の熱劣化で透過する光量が低下していく。この寿命は温度との依存性が あり、これはアレニウス則で決まっていく。 (15)セラミック振動子温度サイクル寿命 セラミックで構成される振動子は温度変動が繰り返されると分極がとけ、インピーダンス特性が 変化、共振抵抗が上昇するという劣化が起こっていく。 温度差ΔTと温度サイクル数によって寿命が決まっていく。 (16)バリスタ耐サージ寿命 バリスタはサージ電流がかかるとある一定以上の電流は自らの自己発熱で吸収して 後段回路への電流の流れ込みを止める素子である。 回路に繰り返しのサージ電流(電圧)がかかると熱が発生することにより、セラミック組織の 分極がとけ、バリスタ電圧が低下、劣化していく。 サージ電流、サージ波尾長に対するメーカの耐久回数データからサージエネルギーに対する S-N図に置き換える事例を紹介する。 (17)センサ温冷浴寿命 投光素子を組み込んだ光電スイッチの耐水性について故障判定水準を水分が樹脂注入した 回路部に入り込んで動作不能となる回路故障とその前兆でもあるレンズ部に 水滴がはいり込んで曇りを生ずる故障の2点から耐水寿命を追求した事例。 多数の加速因子が考えられる中でまず田口メソッドをつかって要因を絞り込んだのち その影響度の高い因子での試験条件で試験を実施して市場データと比較して形状パラメータmの比較、解析と加速係数を追求したもの。 7.寿命予測法 (1)ファーストフェイラーポイントに既知の故障パラメータmを当てはめる法 (2)規格値を最悪値として既知の故障パラメータmをあてはめる法 (3)いくつかの実験データから故障理論式の定数を求めて修正式をあてはめる法 (4)既知の材料S-Nデータを利用して実構造で測定したポイント値をあてはめる法 (5)市場戻入品から劣化特性の劣化度測定して寿命劣化点を定めてもとめる法 (6)既知の類似故障モードのデータを利用してもとめる法 8.試験法の生い立ちと加速データの実用試験への展開 (1)高温 (2)低温 (3)温度サイクル (4)湿度 (5)乾湿サイクル (6)振動 (7)ノイズ/サージ (8)電圧変動 (9)動作繰返し 講師紹介 勤務会社歴 昭和無線工業(現SMK) 5年2ヶ月 トリオ(現ケンウッド) 3ヶ月 立石電機(現オムロン) 38年7ヶ月 職 歴 スイッチ製造技術 3年2ヶ月 コネクタ製造技術 1年 圧着・ハーネス製造技術 2年 アンプ・チューナ製造技術 3ヶ月 部品メーカ監査(加工部品) 20年 (電子部品・機構部品) 25年 制御機構部品(リレー・スイッチ・タイマ・センサ)品質保証 15年 自動車電装部品(ECU・リレー・センサ・スイッチ)品質保証 25年 最終職位 品質保証部並びに部品技術部 部長 韓国オムロン電装 理事(役員) 上海欧姆龍控制電器 顧問 福達合金材料 顧問 学会活動 日本信頼性学会会員 23年 日本信頼性学会企画委員(地域委員) 2年 日本科学技術連盟講師 24年 日本科学技術連盟信頼性開発技術研究会 委員長 2年(1期) 日本科学技術連盟信頼性開発技術研究会 副委員長 4年(2期) 表 彰 中国浙江省温州市政府・雁蕩友誼賞(外国人技術功績表彰) 学 歴 東京電機大学工学部電気工学科 著 書 ゴム・樹脂製品における故障解析と寿命予測 (日本テクノセンター) 電子・電気製品の発火・不良現象の原因究明技術と安全対策(技術情報協会) 学会等論文 制御部品の余寿命予測に関する一考察(日本信頼性学会) 銅合金の応力腐食割れとプラスチックの環境応力割れ(日本信頼性学会) 信頼性データの収集と体系化に関する一考察(日本信頼性学会)