接着品質改善実践講座
異種材接着、構造・精密接着に必要な高品質接着の考え方と具体的手法 【２日間セット講座】
【１日目】１０月３０日（火）品質つくり込み技術編
【２日目】１０月３１日（水）耐久性・設計最適化編

＜１日目＞
１．高信頼性・高品質接着の作り込みの必須条件と目標値
　(1)高信頼性・高品質接着とは
　(2)開発段階での作り込みの目標値
　　a)凝集破壊率をどのくらいにすべきか
　　b)ばらつき（変動係数）をどの程度に抑えるべきか
　　c)接着強度を破断強度で考えず内部破壊で考える
　　d)接着強度の分布の最適な形は何か
２．接着のメカニズムと目標値達成のための方法
　(1)接着の過程
　(2)接着のメカニズム
　　a)分子間力
　　b)必要な分子間の距離をどう確保するか
　(3)分子間力を左右する表面張力
　　a)各種材料の接着のし易さと表面張力
　　b)必要な表面張力はどのくらいか、測定法は
　(4)表面張力を高くする表面改質
　　a)目的
　　b)表面改質法
　　c)改質メカニズム
　　d)改質事例
　　e)改質時の湿度の影響
　　f)改質後の接着可能時間
　(5)プライマー、カップリング剤処理の効果と注意点
　(6)表面粗面化の効果とマイナス効果
　(7)接着の脆弱箇所（アキレス腱）はどこか
３．接着の機能・特性を損なう「内部応力」の発生メカニズムと影響諸因子、低減法　　
　(1)内部応力で生じる不具合
　(2)内部応力の種類
　　a)硬化収縮応力（接着剤の硬化時に発生）
　　b)熱収縮応力（加熱硬化後の冷却時に発生）
　　c)熱応力（使用中の温度変化により発生）
　　d)吸水膨潤応力
　　 1)接着剤の吸水膨潤応力
　　 2)被着材の吸水膨潤応力
　　e)被着材の変形による応力
　　 1)被着材料内部の温度むらによる変形応力
　　 2)接着時の加圧によるスプリングバック力
　(3)接着剤の粘弾性特性と応力緩和
　(4)異種材接着における内部応力による不具合
　　a)各種の変形のモード
　　b)勘合接着における不具合
　(5)内部応力に影響するその他の因子
　　a)接着部の構造
　　b)接着剤の塗布量、塗布位置
　　c)接着剤の物性、部品の厚さ（剛性）
　　d)接着剤の短時間硬化、後硬化
　(6)内部応力の評価法
　(7)接着層の内部応力の低減策
４．接着剤の選定、最適な設計・施工に必要なポイントとトラブル防止策
　(1)接着剤の硬さ、伸びと各種強度の関係
　(2)カタログを見る時の注意点
　(3)接着層の厚さと各種強度の関係
　(4)被着材の強度と接着破断強度の関係
　(5)最適な加圧力とやってはいけない加圧の注意点
　(6)空気を巻き込まない接着剤の塗布方法
　(7)接着剤のはみ出し量と接着強度の関係
　(8)接着剤のはみ出しの影響
　(9)精密位置合せ部品の隅肉接着での注意点
　(10)亜鉛めっき鋼板の接着での注意点
　(11)接着剤の塗布・硬化の確認方法
５．接着剤の種類と特徴・注意点、選定方法
　(1)接着剤の分類法
　(2)構造用接着剤の種類と長所・欠点
　　a)エポキシ系接着剤　
　　b)ウレタン系接着剤
　　c)アクリル系接着剤（ＳＧＡ）
　(3)エンジニアリング接着剤の種類と長所・欠点
　　a)嫌気性接着剤　　　
　　b)光硬化型接着剤
　　c)瞬間接着剤
　(4)柔軟性接着剤の種類と長所・欠点
　　a)シリコーン系接着剤　
　　b)変成シリコーン系接着剤
　　c)両面テープ
　(5)表面処理が容易（不要）な接着剤
　　a)油面接着性接着剤　
　　b)ＰＰ，ＰＥ用接着剤
　(6)接着剤の選び方
　　a)欠点からの消去法による選定方法
　　b)作業・管理のポイントからの絞り込み
６．名刺交換、個別質問
　個別に相談事項があれば、17:20以降に質問会を実施いたします。

＜２日目＞
１．接着劣化のメカニズムと評価のポイント
　(1)接着接合部における劣化箇所
　(2)代表的劣化要因
　(3)接着劣化のメカニズム
　　a)熱劣化における3つの劣化モード
　　b)ヒートサイクル、ヒートショック劣化の要因
　　c)水分劣化における4つの劣化モード
　　d)継続荷重によるクリープ劣化、粘弾性特性
　(4)耐久性評価における注意点（試験片と製品での差異）
　　a)水分劣化における接着部の形状・寸法の影響
　　 1)S/Lパラメーターの影響
　　 2)Fickの拡散の法則と接着部の水分濃度の変化
　　 3)細長い接着部の幅と劣化速度の関係（幅の比の二乗則）
　　 4)水分濃度と接着強度の関係
　　b)吸水後の乾燥による接着強度の回復性
　　 1)劣化モードによる致命的損傷と非致命的損傷
　　 2)致命的損傷だけの評価方法
　　c)応力と水分による複合劣化
　(5)耐久性評価試験の種類と加速試験条件の決め方
２．接着耐久性の長期寿命予測法
　(1)寿命予測を行う時の鉄則
　(2)長期熱劣化の予測法
　　a)アレニウス法による予測法
　　b)ガラス転移温度と予測結果の尤度の関係
　(3)長期水分劣化の予測法
　　a)アレニウス法による予測法と結果の尤度
　　b)Fickの拡散の法則を用いた水分濃度分布からの推定法
　(4)長期屋外暴露劣化の予測法
　　a)アレニウス法と乾燥可逆性からの推定法、実験値との比較
　(5)クリープ耐久性の予測法
　　a)応力負荷の簡易治具
　　b)温度/時間換算による推定法
　　c)Larson-Millerのマスターカーブ法による推定法
　(6)疲労耐久性の予測法
３．必要継手強度とばらつきの管理値を簡易に見積もる『原賀式Cv接着設計法』 　　　　　　　　　　　　　　　　
　(1)原賀式 『Cv接着設計法』 とは
　(2)原賀式 『Cv接着設計法』 の構成要素と考え方
　　a)接着部に加わる最大負荷力と発生不良率
　　b)設計段階で設定される許容不良率
　　c)工程能力指数と信頼性指数
　　d)ばらつきの指標、変動係数とばらつき係数
　　e)信頼性指数、許容不良率、変動係数、ばらつき係数の関係
　　f)破断強度は設計には使えない。内部破壊係数を考慮する。
　 　1)一時的な静荷重のみが負荷されるの場合
　　 2)高サイクル疲労負荷の場合
　　 3)ヒートサイクル負荷の場合
　　g)劣化による強度低下とばらつきの増加
　　h)安全率
　(3)原賀式 『Cv接着設計法 』における設計式
　　a)継手の破断強度は、接着部の最大負荷力の何倍あれば良いかを求める設計式
　　b)初期の変動係数はどのくらいに作り込む必要があるかを求める設計式
　(4)原賀式『Cv接着設計法』による見積りの計算例
４．最適設計のための『耐用年数経過後の安全率の尤度の定量化法』
　(1)この評価法の適用の目的と前提条件
　(2)接着強度の経年変化の概念と実効接着強度、最大負荷力の関係
　(3)耐用年数経過後の安全率の尤度の算出法
　　a)評価のプロセス
　　b)クリープや疲労などの応力劣化を伴う場合の算出式
　　c)一時的な静荷重だけが負荷される場合の算出式
　　d)複合劣化係数の求め方
　　e)耐用年数経過後のばらつき係数の求め方
　(4)耐用年数経過後の安全率の尤度の算出事例
　　a)接着部の要求条件と評価条件への落とし込み
　　b)加速劣化試験条件の最適化の例
　　 1)ヒートサイクル
　　 2)熱劣化
　(5)安全率の尤度の再配分の例
　　a)信頼度の向上（許容不良率の低減）
　　b)作業性の改善
５．接着の特性・信頼性の向上とコストダウンを両立させる『複合接着接合法　』
　(1)複合接着接合法とは
　(2)代表的な複合接着接合法
　　a)ウェルドボンディング
　　b)リベットボンディング
　　c)メカニカルクリンチングとの併用
　　d)セルフピアスリベットとの併用
　　e)その他
　(3)接着剤と他の接合法の役割の分担
　(4)複合接着接合法の諸特性
　　a)静的せん断強度
　　b)接着強度のばらつきの低減
　　c)薄板での剥離強度の改善
　　d)破断に対する冗長性（破壊エネルギー）の向上
　　e)高温における接着強度の向上
　　f)疲労耐久性の向上
　　g)クリープ耐久性の向上
　　h)応力負荷状態での接着部の耐水性の向上
　　i)接着作業性の向上、コストダウン
６．信頼性、耐久性、寿命、安全率に関係するトラブル事例
　(1)ばらつきを考慮せずに平均値で設計した
　(2)トラブル品での発生不良率の見積り
　(3)水分の乾燥による接着強度の回復を考慮しなかった
　(4)クリープが加わっている状態に気がつかなかった　
　(5)その他
７．名刺交換

講師紹介

略歴：三菱電機（株）研究所にて入社以来接着接合技術の研究・開発に従事，主管技師長、技術顧問等を経て2012年退職，独立。
　　　４５年間にわたって機器組立に接着剤を活用し高信頼性接着技術を構築してきた接着の耐久性・信頼性の第一人者
現在の委員等：・接着適用技術者養成講座 講座長（日本接着学会 構造接着研究会）
　　　　　　　・接着技術者スキルアップ講座 講座長（日本接着学会 構造接着研究会）
　　　　　　　・日本接着学会 構造接着研究会 会長補佐
著書：・「わかる！使える！接着入門<基礎知識><段取り><実作業>」
　　　・「高信頼性接着の実務－事例と信頼性の考え方－」
　　　・「高信頼性を引き出す接着設計技術－基礎から耐久性、寿命、安全率評価まで－」
　　　・「自動車軽量化のための接着接合入門」（いずれも日刊工業新聞社刊）
　　　・その他、共著書籍多数