接着剤を用いる立場で44年間にわたって講師が自ら取得した豊富なデーターと経験、ノウハウで、
接着不良を出さない高信頼性・高品質接着の達成法を具体的・実践的にわかりやすく解説。昨年まで14年間に渡って
好評を博した2日間定番セミナーを、さらに内容を増強・ブラッシュアップ、講義時間も延長してリニューアル開講!
- 講師
(株)原賀接着技術コンサルタント
専務取締役 首席コンサルタント 工学博士 原賀 康介先生
三菱電機(株)研究所にて入社以来接着接合技術の研究・開発に従事,主席技師長等を経て2012年退職,独立。
44年間にわたって機器組立に接着剤を活用し高信頼性接着技術を構築してきた接着の耐久・信頼性の第一人者
- 日時
- 会場
- 受講料
- 1名:74,520円 同時複数人数申込みの場合 1名:66,960円
★1日のみ受講の場合:受講料(消費税等込)1名:48,600円 同時複数人数申込みの場合 1名:43,200円
- テキスト
受講概要
※本講座は、2日間受講を原則としますが、1日目のみ、2日目のみの受講も可能です。 1日目のみ、2日目のみの受講申込みの方はお申し込みページの備考欄にご記載願います。
受講対象
<1日目> これから接着に携わる初心者から、品質・機能を追求されるベテラン技術者まで <2日目> 接着に関する基礎的知識をお持ちで、耐久性や強度設計で困っておられる技術者
習得知識
<1日目> 1)信頼性の基礎知識 2)高信頼性・高品質接着の目標値と考え方 3)接着のメカニズムと接着特性・信頼性の向上策 4)内部応力の発生メカニズムと影響因子、低減法 5)接着の設計・施工におけるポイント、トラブル防止策 6)接着剤の種類と特徴、使用上の注意点、選び方 <2日目> 1)劣化のメカニズムと耐久性評価試験のポイント 2)長期耐久性の寿命予測法 3)高信頼性・高品質接着の設計基準(設計法) 4)耐用年数経過後の安全率の定量化法 5)接合の特性・信頼性の向上とコスト低減を両立する複合接着接合法 6)信頼性、耐久性、寿命、安全率に関係するトラブル事例
講師の言葉
<1日目> 接着不良のほとんどは、高信頼性・高品質接着の必須条件が満たされていないために起こっている。 ここでは、高信頼性・高品質接着の 作り込みの必須条件と目標値を明確に示し、接着のメカニズムをわかりやすく述べた上で、目標値の具体的な達成方法を説明する。 接着における不良は接着部の剥がれだけでなく、接着剤の硬化時や使用時の温度変化などによって発生する「内部応力」による機器や 部品の機能・特性低下の問題も非常に多く、特に、異種材接着では問題となる。そこで、内部応力の発生メカニズムと内部応力に及ぼす 諸因子の影響を明確にし、内部応力の低減法について説明する。 適切な接着剤を選定するためには、接着剤の種類、反応形態、特徴を理解しておく必要がある。ここでは、接着剤を使う側の立場から 各種接着剤の特徴・欠点と使用上の注意点、カタログを見る時の注意点も説明する。 その他に、被着材料側の問題、強度試験・接着設計・接着作業上の問題についても示し、未然に接着不良を防止する勘どころを紹介する。 <2日目> 接着接合の適用における最大の課題は、耐久性が不明確な点である。試験片での劣化試験結果と製品の接着部での劣化特性が 一致しないことも頻繁に起こる。接着部の劣化の主要因は、接着剤自体の劣化と思われがちだが、界面や被着材料、接着部の形状・寸法も 大きく影響する。 ここでは、接着劣化のメカニズムを劣化モード別に説明し、複合された劣化モードの分離法や水分劣化における接着部の形状・寸法の 影響などについて、耐久性試験におけるポイントを述べ、長期接着強度の経時変化の具体的推定法を示す。 劣化による不良と対策の事例、不良率の推定例も述べる。 製品の耐用年数にわたって、信頼性の高い接着を維持するためにはどの程度の 接着面積を確保しておけば良いのか、初期の接着強度のばらつきをどの程度に抑えれば良いのかが分からなければ製品の接着部の設計はできない。 平均強度や破断強度で接着強度を考えること自体に問題がある。接着強度のばらつき、内部破壊、劣化、安全率などを考慮して必要な 継手強度とばらつきの許容限界を開発初期の段階で評価試験なしで簡単に求める設計法を示す。また、開発終了段階で耐用年数経過時点で どのくらいの安全率が残っているかを、検証試験を行って求める方法も示す。 さらに、接着部の強度・耐久性・信頼性の向上とコストダウンを両立させる「複合接着接合法」についても述べる。
書籍配布
<1日目>「高信頼性接着の実務ー事例と信頼性の考え方ー」(講師著:日刊工業新聞社刊) <2日目>「高信頼生を引き出す接着設計技術ー基礎から耐久性、寿命、安全率評価までー」(講師著:日刊工業新聞社刊)
プログラム
<1日目> 1.高信頼性・高品質接着の作り込みの必須条件と目標値 (1)高信頼性・高品質接着とは (2)開発段階での作り込みの目標値 ①凝集破壊率をどのくらいにすべきか ②ばらつき(変動係数)をどの程度に抑えるべきか ③接着強度を破断強度で考えず内部破壊で考える ④接着強度の分布の最適な形は何か 2.接着のメカニズムと目標値達成のための方法 (1)接着の過程 (2)接着のメカニズム ①分子間力 ②必要な分子間の距離をどう確保するか (3)分子間力を左右する表面張力 ①各種材料の接着のし易さと表面張力 ②必要な表面張力はどのくらいか、測定法は (4)表面張力を高くする表面改質 ①目的 ②表面改質法 ③改質メカニズム ④改質事例 ⑤改質時の湿度の影響 ⑥改質後の接着可能時間 (5)プライマー、カップリング剤処理の効果と注意点 (6)表面粗面化の効果とマイナス効果 (7)接着の脆弱箇所(アキレス腱)はどこか 3.接着の機能・特性を損なう「内部応力」の発生メカニズムと影響諸因子、低減法 (1)内部応力で生じる不具合 (2)内部応力の種類と発生メカニズム ①硬化収縮応力 ②加熱硬化後の熱収縮応力 ③使用中の温度変化による熱応力 ④樹脂の吸水による膨潤応力 ⑤接着剤の粘弾性と応力緩和 (3)内部応力に影響する諸因子 ①接着剤の硬さ、ガラス転移温度、収縮率、線膨張係数、 ②部品の厚さ、剛性 ③接着部の形状 ④硬化速度 ⑤加熱硬化時の温度勾配 ⑥室温硬化後の後硬化 (4)内部応力の評価法 (5)内部応力の低減策 4.接着の最適な設計・施工に必要なポイントとトラブル防止策 (1)接着剤の硬さ、伸びと各種強度の関係 (2)カタログを見る時の注意点 (3)接着層の厚さと各種強度の関係 (4)被着材の強度と接着破断強度の関係 (5)最適な加圧力とやってはいけない加圧の注意点 (6)空気を巻き込まない接着剤の塗布方法 (7)接着剤のはみ出し量と接着強度の関係 (8)接着剤のはみ出しの影響 (9)精密位置合せ部品の隅肉接着での注意点 (10)亜鉛めっき鋼板の接着での注意点 (11)接着剤の塗布・硬化の確認方法 5.接着剤の種類と特徴・注意点、選定方法 (1)接着剤の分類法 (2)構造用接着剤の種類と長所・欠点 ①エポキシ系接着剤、②ウレタン系接着剤、③アクリル系接着剤(SGA) (3)エンジニアリング接着剤の種類と長所・欠点 ①嫌気性接着剤 ②光硬化型接着剤 ③瞬間接着剤 ④シリコーン系接着剤 ⑤変成シリコーン系接着剤 ⑥仮固定用接着剤 ⑦両面テープ (4)表面処理が容易(不要)な接着剤 ①油面接着性接着剤 ②PP,PE用接着剤 (5)接着剤の選び方 6.名刺交換、個別質問 個別に相談事項があれば、閉講後に質問会を実施いたします。 <2日目> 1.接着劣化のメカニズムと評価のポイント (1)接着接合部における劣化箇所 (2)代表的劣化要因 (3)接着劣化のメカニズム ①熱劣化における3つの劣化モード ②ヒートサイクル、ヒートショック劣化の要因 ③水分劣化における4つの劣化モード ④継続荷重によるクリープ劣化、粘弾性特性 (4)耐久性評価における注意点(試験片と製品での差異) ①水分劣化における接着部の形状・寸法の影響 1)S/Lパラメーターの影響 2)Fickの拡散の法則と接着部の水分濃度の変化 3)細長い接着部の幅と劣化速度の関係(幅の比の二乗則) 4)水分濃度と接着強度の関係 ②吸水後の乾燥による接着強度の回復性 1)劣化モードによる致命的損傷と非致命的損傷 2)致命的損傷だけの評価方法 ③応力と水分による複合劣化 (5)耐久性評価試験の種類と加速試験条件の決め方 2.接着耐久性の長期寿命予測法 (1)寿命予測を行う時の鉄則 (2)長期熱劣化の予測法 ①アレニウス法による予測法 ②ガラス転移温度と予測結果の尤度の関係 (3)長期水分劣化の予測法 ①アレニウス法による予測法と結果の尤度 ②Fickの拡散の法則を用いた水分濃度分布からの推定法 (4)長期屋外暴露劣化の予測法 ①アレニウス法と乾燥可逆性からの推定法、実験値との比較 (5)クリープ耐久性の予測法 ①応力負荷の簡易治具 ②温度/時間換算による推定法 ③Larson-Millerのマスターカーブ法による推定法 (6)疲労耐久性の予測法 3.必要継手強度とばらつきの管理値を簡易に見積もる『原賀式Cv接着設計法』 (1)原賀式 『Cv接着設計法』 とは (2)原賀式 『Cv接着設計法』 の構成要素と考え方 ①接着部に加わる最大負荷力と発生不良率 ②設計段階で設定される許容不良率 ③工程能力指数と信頼性指数 ④ばらつきの指標、変動係数とばらつき係数 ⑤信頼性指数、許容不良率、変動係数、ばらつき係数の関係 ⑥破断強度は設計には使えない。内部破壊係数を考慮する。 1)一時的な静荷重のみが負荷されるの場合 2)高サイクル疲労負荷の場合 3)ヒートサイクル負荷の場合 ⑦劣化による強度低下とばらつきの増加 ⑧安全率 (3)原賀式 『Cv接着設計法 』における設計式 ①継手の破断強度は、接着部の最大負荷力の何倍あれば良いかを求める設計式 ②初期の変動係数はどのくらいに作り込む必要があるかを求める設計式 (4)原賀式『Cv接着設計法』による見積りの計算例 4.最適設計のための『耐用年数経過後の安全率の尤度の定量化法』 (1)この評価法の適用の目的と前提条件 (2)接着強度の経年変化の概念と実効接着強度、最大負荷力の関係 (3)耐用年数経過後の安全率の尤度の算出法 ①評価のプロセス ②クリープや疲労などの応力劣化を伴う場合の算出式 ③一時的な静荷重だけが負荷される場合の算出式 ④複合劣化係数の求め方 ⑤耐用年数経過後のばらつき係数の求め方 (4)耐用年数経過後の安全率の尤度の算出事例 ①接着部の要求条件と評価条件への落とし込み ②加速劣化試験条件の最適化の例 1)ヒートサイクル 2)熱劣化 (5)安全率の尤度の再配分の例 ①信頼度の向上(許容不良率の低減) ②作業性の改善 5.接着の特性・信頼性の向上とコストダウンを両立させる『複合接着接合法 』 (1)複合接着接合法とは (2)代表的な複合接着接合法 ①ウェルドボンディング ②リベットボンディング ③メカニカルクリンチングとの併用 ④セルフピアスリベットとの併用 ⑤その他 (3)接着剤と他の接合法の役割の分担 (4)複合接着接合法の諸特性 ①静的せん断強度 ②接着強度のばらつきの低減 ③薄板での剥離強度の改善 ④破断に対する冗長性(破壊エネルギー)の向上 ⑤高温における接着強度の向上 ⑥疲労耐久性の向上 ⑦クリープ耐久性の向上 ⑧応力負荷状態での接着部の耐水性の向上 ⑨接着作業性の向上、コストダウン 6.信頼性、耐久性、寿命、安全率に関係するトラブル事例 (1)ばらつきを考慮せずに平均値で設計した (2)トラブル品での発生不良率の見積り (3)水分の乾燥による接着強度の回復を考慮しなかった (4)クリープが加わっている状態に気がつかなかった (5)試験片と製品の接着部の寸法の関係を考慮しなかった (6)疲労強度を間違った (7)試験片での強度を用いたため劣化率を見誤った
講師紹介
略歴:三菱電機(株)研究所にて入社以来接着接合技術の研究・開発に従事,主管技師長、技術顧問等を経て2012年退職,独立。 44年間にわたって機器組立に接着剤を活用し高信頼性接着技術を構築してきた接着の耐久性・信頼性の第一人者 現在の委員等:・接着適用技術者養成講座 講座長(日本接着学会 構造接着研究会) ・日本接着学会 構造接着研究会 幹事 ・ISMA(新構造材料技術研究組合)構造材料用接着技術検討委員会委員 著書:・「高信頼性接着の実務-事例と信頼性の考え方-」 ・「高信頼性を引き出す接着設計技術-基礎から耐久性、寿命、安全率評価まで-」 ・「自動車軽量化のための接着接合入門」(いずれも日刊工業新聞社刊) ・その他、共著書籍多数