開発段階ごとのスケールアップの考え方,トラブル事例,対応策(考え方,実験法),変更に伴う同等性,
変更管理,そこから想定される将来のリスク対応について実例を交えて解説する特別セミナー!!
- 講師
株式会社三和ケミファ 医薬品事業部 統括本部長 薬剤師 薬学博士 丸橋 和夫 先生
和光純薬工業,大鵬薬品工業,三菱商事,(株)エースジャパンを経て現職
- 日時
- 会場
- 受講料
- 1名:48,600円 同時複数人数申込みの場合 1名:43,200円
- テキスト
受講概要
受講対象
製薬会社、化学会社、原薬(プロセス、QC)、品質保証、実務担当者~管理職 実験担当者
予備知識
有機化学、プロセス化学、GMPの予備知識があれば理解しやすいと思います。
習得知識
1)スケールアップの考え方、ポイント、着目点。 2)医薬品原薬の開発段階に応じた変更管理の考え方。 3)スケールアップの失敗例、その原因、解決策。 4)スケールアップ前後の同等性の考え方。 5)種々の事例から予測されるリスクとその対応策(考え方) 6)スケールアップ・スケールダウン実験の考え方、進め方
講師の言葉
医薬品原薬のスケールアップ製造は医薬品の開発では絶対に避けられない部分である。開発段階でのスケールアップ製造は、 候補化合物の選定後、前臨床試験、臨床試験用の原薬製造、技術移転、商用生産など多くの場面で実施される。 特に商用生産開始前のプロセスバリデーションは重要な位置づけにある。これまで、プロセスバリデーションは技術移転時や 変更の実施時など限られた時点で限られた数のバッチ(基本的に3バッチ)で行われてきたが、近年示された改正バリデーション基準で、 リスクに基づく考え方を取り入れることが求められた。 具体的には、1回の予測的バリデーションの成立(実生産規模での3ロット)だけで目的とする品質に適合する製品の恒常性を 確保するには限界があり、バリデーションを1つの完結ステップと捉えず、工業化研究、技術移転等に基づいて予測的バリデーションを 実施し、開発の初期段階から商用生産を通じて得られた知見、更にそこから想定されるリスクを検討し、製品のライフサイクル中も 継続的な改善を行うことが求められる。 一方、上市を前提とした開発期間中のスケールアップ製造は治験薬GMPに基づく管理が求められ、特に、前臨床試験で使用した バイオバッチ原薬を基本に、臨床試験で使用する治験薬、その後の商用生産の原薬まで不純物プロファイル、結晶多形等の物理的 性質などの一貫性が求められ、変更管理を誤ると開発期間延長になるなど影響が大きい。 本セミナーでは、開発段階ごとのスケールアップの考え方と実際に経験したスケールアップ製造、遭遇したトラブル等その事例を もとに、対応策(考え方、実験法)、変更に伴う同等性、変更管理をどのように考えたか、更にそこから考えられる将来のリスク、 対応策についても説明する。
プログラム
1. 医薬品(原薬)の開発とスケールアップ(基本的な考え方) 2. 小スケール実験とスケールアップ製造の相違点 小スケールとスケールアップのパラメータの比較と考え方、設定法 3. スケールアップ実験するためのチェックポイント、考え方 原料、中間体の評価項目(安全性、安定性、結晶多形、溶媒和他)とその対応策、スケールアップを想定した実験法(スケールダウン実験)の具体例 4. 開発段階に応じた変更管理、それに伴う同等性評価の考え方、トラブル対策、リスク管理について、実際の事例をもとに (1)開発初期(探索~前臨床試験段階)1~10Lスケールの事例 ・転位反応が原因で目的物が得られない(対応策) ・グリニヤール反応の例(塩酸ペンタゾシンの製造プロセス) ・カラム分離精製工程の回避:前臨床試験に進むことが決まり、カラム分離工程回避の必要性が出てきた。 ・爆発性中間体の回避(アミノチアゾール酢酸誘導体:抗生物質側鎖):メチルエステル、エチルエステルの比較実験をして、中間体の物性を比較。合理的な合成法に至った。 ・五塩化リンによるクロル化プロセスの溶媒回収:回収可能な溶媒組成に変更したら反応が進まなくなった。 ・抗生物質の側鎖の製造:新合成法を考案し、特許出願。製造開始直前に中間体に安全性の問題(蓄熱性試験)あることがわかり、検討中止。 ・酒石酸イフェンプロジルの合成:発想を変えることで、新しい製法に結びついた。 ・ペントキシフィリン中間体の製法検討:文献を参考に実験を進めたが目的物は得られず、実験結果に基づいて検討を進めたところ、簡単な製法にたどり着いた。 ・青酸ガス使用の回避(カルバペネム系抗生物質側鎖) ・目的物の安定性(ピリジン・無水硫酸錯体の製造):目的物が得られないのは吸湿性が原因と判断したが、逆に副生物の吸湿性を利用することで大量生産可能な方法に至った。 ・その他 (2)パイロット試作(前臨床~臨床試験段階:200~500Lスケール)での事例 ・治験用原薬の外部委託:結晶多形があることがわかりながら、作り分けることができず、そのままIND申請して臨床試験(P-Ⅰ)に進んだ。FDAより結晶多形の考え方を求められた。 ・反応プロセスの理解の必要性(ジクロルアセトニトリルの製造):設備の性能を安易に考えて刺激性のミストが噴出した。 ・目的物の安定性確認(抗生物質側鎖:アミノチアジアゾール誘導体の製造):設備の性能を安易に考えてオーバー反応してしまった。 ・溶媒和物、水和物の扱い方:アミノチアジアゾール誘導体を例に溶媒和物の脱溶媒法、水和物の脱水法(無水和物への変換法)の考え方、実験法。 ・臭素の取り扱い(臭素化プロセスのスケールアップ):パイロットにスケールアップしたところ、反応開始を確認できず、大きなトラブルに陥りそうになった。対処法を検討した結果、合理的かつ安全なプロセス開発に至った。 ・目的物が異性化(抗生物質側鎖:アミノチアゾール酢酸誘導体の製造):再結晶プロセスをスケールアップしたら目的物が得られなくなった。 ・撹拌速度の影響(アセトン/炭酸カリウム系でのアルキル化反応):不均一反応の代表的な例、対応策、応用例。 ・その他 (3)パイロットから商用生産(臨床試験後期~商用生産段階)2000Lスケール以上での事例 ・目標規格の原料が手に入らない(試薬と工業用原料):商用生産に入ろうとしたら原料が入手できなくなった。 ・設備変更して反応の本来の姿がわかった:パイロットまでGL、商用生産でSUSに切り替えようとしたところ設備(SUS)に錆が発生。 ・アミノチアゾール酢酸製造のスケールアップ:パイロットまでは問題なかったが、商用生産で乾燥機の選択を誤った。 ・スポット生産とキャンペーン生産(抗生物質修飾基):治験段階(スポット生産)では問題なかったエステル交換反応が、商用生産(キャンペーン生産)に切り替えたところエステル交換反応が進まなくなった。 ・臨床試験途中での原薬の委託先を変更:技術移転したら結晶多形の同等性で問題が発生。同等性の考え方、安定性試験、他 ・出発原料の製法に伴う問題(製法に伴う異性体混入の可能性) ・残留溶媒の規格:商用生産に移行しようとしたら残留溶媒の問題が発生。 ・その他 (4)商用生産開始後の事例 ・収量低下の逸脱:原料の溶解時間の影響 ・予期しない逸脱の事例について 1)震災による停電で逸脱が多発。FDAの査察で逸脱の対応について説明を求められた。 2)製品を納入したら、塊が混在。 3)その他 ・技術移転:季節の影響まで考えていなかった。 ・原料を高純度品に切り替えたら逸脱発生:高純度の原料に切り替えた途端に逸脱 ・乾燥時間の管理(リスク管理の必要性):順調に商用生産がスタートしたが、製品の乾燥時間が2倍(10時間→20時間)のバッチが発生。 ・その他
5.その他、質疑応答
講師紹介
略 歴 1979.3 岐阜薬科大学大学院博士後期課程中退 1979.4 和光純薬工業株式会社入社、東京研究所主席研究員を経て、 1991.10 大鵬薬品工業株式会社入社、工業化技術研究所所長、合成技術研究所所長を経て、 2007.7 三菱商事株式会社入社、先端化学品本部技術顧問(兼)常熟力菱精化工有限公司(中国、常熟市)研開部本部長を経て、 2008.7 株式会社エースジャパン入社、常務取締役山形工場長を経て、 2015.4 株式会社三和ケミファ入社、現在に至る。 著作、 分担執筆 1)高純度化技術体系 第3巻 高純度物質製造プロセス 生理活性有機化合物の分離精製・高純度化 “医薬品原薬の精製技術” フジテクノシステム(1997年発刊) 2)原薬輸入・海外調達における課題/薬事規制への対応 第6章 海外製造業者との取り引きの際における留意点 株式会社情報機構(2010年8月発刊) 3)3極要求を反映したGMP-SOP全集 第2章3極査察を見据えた原薬・製剤プロセスバリデーションの実施と手順書作成 第1節原薬のプロセスバリデーション実施とその手順書 サイエンス&テクノロジー(2011年6月発刊) 4)3極要求相違を踏まえたCMC申請資料作成と当局対応ノウハウ IND申請におけるCMCパートでの記載要求事項 第6章 IND申請における原薬欄記載の留意点 サイエンス&テクノロジー(2012年2月発刊) 5)GMP・バリデーション 実務バイブル 第1部 プロセスバリデーションの具体的実施方法と文書作成の留意点 株式会社技術情報協会(2012年6月発刊) 6)中国製造所 への医薬品製造委託・監査・バリデーション実施及び海外からの輸入・調達時のポイント 第4章 生産移管、製造アウトソーシングの留意点 株式会社情報機構(2012年11月発刊) 7)GDP徹底理解 第7章 GDP査察への対応 規制当局の査察動向および事例等 株式会社情報機構(2014年発刊) 8)月刊ファームステージ ICHQ11(原薬開発)の業務への落とし込みと運用 ICHQ11が求める原薬製造のプロセスバリデーション 株式会社技術情報協会(2015年7月発刊) 9)月刊ファームステージ 特集1『原薬・製剤・資材の保管と管理』原料・資材等の適切な 管理方法 株式会社技術情報協会(2016年11月発刊予定) 10)治験用原薬製造の留意点、GDP、リスクベースドプロセスバリデーションについて、 計3件 原稿準備中 執筆協力 1)医学・薬学・化学領域の独英和活用大辞典 -日・独・英三か国語対照- 岐阜薬科大学教授 河辺 実 編著 (廣川書店より1984年刊) 所属学会・協会および役職・活動状況: 日本薬学会、米国化学会、PDA学会 会員 約36年医薬品中間体、原薬の商用生産に関する業務を担当。この間、治験薬品質管理者(原薬:15年)、医薬品製造管理者(5年)も担当。